大家さんや管理会社さんでも、実際に原状回復工事が行われている様子を
しっかりとご覧になられたことがない方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、あまり知られていない現場の裏側を知って頂こうと思います。

私自身が不動産投資に携わって10年以上
不動産の物件管理や原状回復工事(リフォーム業)を行い始めて7年以上経ちますが
原状回復業などを行う前、まだ投資物件のご紹介ばかりしていたころは
正直、不動産投資の裏側で行われている原状回復工事に、ほとんど興味がありませんでした。
しかし、あることを境に興味を持たざるを得なくなり、今では裏側を知ることこそが
不動産投資に成功する最大の鍵であると判断しております。

そこで今回はその原状回復工事の一部を知って頂けたらと思います。

まず賃貸物件の原状回復工事でとても重要な役割を占める業種として
・ハウスクリーニング
・クロス張替え
この2つが挙げられます。
他にも
・電気工事
・水回りの設備工事
・大工仕事
・冊子
・塗装
・リペア
・畳張替え
・襖張替え
などなど、たくさんの業種がありますが
最も活躍してもらう業種が、ハウスクリーニングとクロス張替えです。

ハウスクリーニングに関しては次の入居者さんに入って頂くためには必ず必要なお仕事です。
余談ですが私が友人と2人で独立したころは、まずこのハウスクリーニング屋として独立しました。
初めは、「掃除やなんて誰でもできるだろ!とにかくたくさん仕事とってきて稼ぎまくろうぜ!」と
若さと体力があれば何でもできるだろうと盛り上がっていたものです。
ところが………
されど掃除や。職人の世界の厳しさを思い知らされました。
今思えば、よくやってこれたなぁ…と切実に感じます。
この実体験を含めてハウスクリーニングに関しては別でしっかりお話しさせて頂きます(苦笑い)

今回は特にクロス張替えをピックアップしていきます。

突然ですがなぜクロス張替えをするのでしょう?

クロスを張らないとボード(下地)が丸見えで見栄えが悪くなってしまうからです。
人で例えるなら丸裸の状態です。丸裸の状態で街中を歩いていたら変質者に見られて
嫌われてしまいますね。それどころか捕まってしまいますね…。
そうならないように服を着て協調性を保ちます。
時にはよりオシャレな服を着たり、化粧などもして美しさをアピールします。

クロスというのはお部屋にとっての服のようなものなのです。
お部屋にクロスを張ってあげることにより、住みやすい空気感を作ってくれるのです。

ですから新しい入居者さんが入居してくれる時に、前の入居者の方が汚してしまったクロスが
そのままだと、当然印象が悪くなってしまいます。
クロスが汚れてしまった時は、なるべくキレイなクロスに張替えてあげることが大切です。

もちろん何年か住んで頂いた後でも、クロスがまだキレイな状態の時もあります。
この場合は無理に張替える必要はありませんし、むしろ資源を大切にするという意味でも
なるべく張替えず、部分補修やクロスクリーニングで済ませることも大切です。
その方が経費もかからずに済みます。
クロスは紙製品なので、資源となる木材を少しでも守っていくことも心掛けたいところです。

張替えが必要なお部屋であっても、大家さんからすれば当然その工事費用を抑えたいところですね。
今の時代インターネットという便利なものがありますので、色々なクロス業者さんを探すことが
可能です。
お手頃に仕事をしてくれそうなクロス屋さんを見つけて、いくつか連絡を取り、見積もりを取ってもらいましょう。
ただ、あまりにもたくさんのところに見積もりを依頼しても、今度は時間ばかり取られてしまい
お部屋の借り手さんを見つけるのが遅くなってしまい、マイナスになってしまうこともあります。

良さそうなところを3つくらいに絞り込んで、まずはお見積りを取ってもらい
そのあとで比較検討したり、交渉をして話を詰めていきましょう。
ここで気を付けないといけないのは、交渉で無理を言い過ぎると断られてしまうケースもあります。
職人さん達にも生活がありますし、見積金額にも理由があります。
そして何よりもプロであることへのプライドもあります。

金額を下げることばかりに囚われてしまうと、逆に不利益を生んでしまう事だってありますので
まずは金額の理由を聞くなどしてコミュニケーションを取ってみてください。
そうすると、金額は他のところよりも若干高めでも仕事を丁寧にしてくれる職人さんだったり
安さが売りだがその代わり丁寧にとまではいかない職人さんだったりという違いが見えてきます。

そうしてある程度目途がついたら、まずは1件現場を任せてみて
自分に合っているかどうかを判断すれば良いと思います。
色々と試していくうちに自分に合っている業者さんが分かってくるはずです。

インターネットでは気に入った業者さんが見つけられない場合は
知合いの大家さんに紹介してもらうなどして根気強く探してみましょう。

ちなみに弊社もクロス張替えを行う業者の1つです。
当然比較検討される側にあり、職人としての立場での気持ちや言い分を分かっているつもりです。
その気持ちを理解して頂くと職人さん達との関係が良くなり
困ったときなどに助けてくれたりします。
頭の片隅に入れておいて損はないと思います。

クロス職人は全体的に単価が下がっています。
この悩みはクロス屋さんだけでなく、職人さん全体的に言えることです。
価格競争が激化していたり、大手の企業に仕事が集中してしまったりで
今まで単価が下がり続けていました。
一方で材料費は高騰しているのです。
単価が下がっているのに材料費が高騰しているので、厳しい状況です。
地域によって単価にばらつきはありますが、単価崩壊している地域も珍しくありません。

更に今年の10月には材料メーカーが金額を上げることになっています。
その状況下で現在の単価ではもう無理だと言っている職人さんたちも少なくありません。
現に弊社へも職人さんからの相談が来ているくらいです。

もう1つ強いて言うならば、単価が下がり材料費が上がる中で
求められるクオリティーがどんどん上がってきているというのもあります。
限られた時間と金額の中で、より高いクオリティーを求められているというのが現状です。
もちろんそれは仕方ないことですし、その状況下でも生き抜いていかなければなりませんので
創意工夫を行い続けるだけです。

お伝えしたいのは、職人さん達も皆感情を持った人間です。
このような苦労もあるんだという事を、少しだけでも理解して頂くことで
職人さん達への対応の仕方も変わり、その態度は職人さんたちに伝わり
この大家さんの現場は頑張ろうという気持ちが生まれてきたり、不足している業種の職人さんを
紹介してくれたりと、大家さんに運が巡ってきたりします。

まだまだ色々な裏側がありますが、長くなってしまいましたので
「原状回復工事の裏側(クロス編)」は一旦この辺で区切らせて頂きます。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。