前回のブログ「原状回復工事の裏側(クロス編)」にて
原状回復工事において最も活躍する2業種が
・クロス屋さん
・ハウスクリーニング屋さん
この2つであることをお伝えしました。

その中で前回はクロス張替えの裏側を少しお伝えさせて頂き
今回はハウスクリーニングの裏側についてお伝えさせて頂こうと思います。

突然ですがハウスクリーニングと聞くとどのようなイメージでしょうか?

8年ほど前、私がサラリーマンを辞めて独立したころ…
私は宅地建物取引士の資格を持ち、投資用の不動産を扱う仕事をしていたにもかかわらず
なぜか友人と2人でハウスクリーニング職人として開業しました。

当時はハッキリ言って「たかが掃除だろう。誰でもできるだろう」という
なめた気持ちでハウスクリーニングを始めました。

営業には自信があったので仕事はすぐにもらうことができました。

「さあやるぞ!」と全く未経験のまま友人と2人で
賃貸マンションの1LDKタイプのお部屋のクリーニングに望みました。

結果…

その日のうちに自宅へ戻ることはありませんでした。。。

早朝7時頃に現場に入り
その現場が終わったのは真夜中と言って良いのか、明け方と言えば良いのかわからないような時間。
疲れ果てて何時なのかも気にする余裕がなく、正確な時間は覚えていませんが
とにかく今から家に帰って少し仮眠を取ったら次の現場で同じ作業をしなければいけないのか
という絶望感ある状況だったことだけは覚えています。

1人前の職人からしたらなんてことはない、日常的な現場です。
1人で朝8時に現場に入ったら夕方5時ごろには終わるような現場を
私と友人2人で朝7時から翌日のおそらく午前3時~4時までひたすら掃除し続けました。

ただただ我々2人の知識、経験が足りませんでした。

その日私たちは
「たかが掃除という考えから、されど掃除、されど職人仕事」と、心の底から尊敬の気持ちに変わりました。

家で行うような日常的な掃除とは全く違う世界でした。
掃除をしてお金をもらうことがこんなに大変だったとは思いませんでした。
これは決して大げさではなく、実際にアパートやマンションの原状回復のハウスクリーニングを経験した
人にしかわからない大変さがあるのです。

本当に衝撃的な経験をしました。
ハウスクリーニングを始めた当初の大変さは決して忘れることはないでしょう。

知識面でいうなら
キッチンの油汚れを落とす洗剤1つにしても何十種類もあります。
ですがその洗剤をそのまま使っていては、レンジフードなどにこびりついた
頑固な油汚れは取れません。
プロの職人であればより早く仕事を終えるために
いくつかの洗剤を合成して、より強力なものを作ります。
そうしなければ仕事が終わらなくらいやることがたくさんあるのです。

また、浴室の掃除に関してはプロが使うカビ取り洗剤に
水垢を落としやすくする洗剤
鏡の鱗を取りやすくする洗剤
鏡の鱗取りの道具や
水垢を取る道具
はたまた床のこびついて落ちない汚れをとる道具などなど
浴室だけでも洗剤や道具の使い分けが色々あります。

その他トイレをピカピカにする為の洗剤や道具
錆取りの為の洗剤や道具
シールはがし、エアコンクリーニング、たばこのヤニ取り、ガラス磨き
床の剥離やワックスなどなど
その場に応じた洗剤や道具が適材適所でたくさん必要なのです。

そして何より必要なのが体力。
賃貸マンションの2LDKや3LDKのお部屋の隅から隅まで全てを掃除するのです。
しかもピカピカにです。

玄関ドアの表、裏両面から始まり、下駄箱、廊下、トイレ、お風呂、キッチン、洗面台、洗濯板
全てのドア、全ての窓ガラス、窓の枠、窓の冊子(溝など全て)、電気のプレート、エアコン
押入れ、クローゼット、ベランダ、カーテンレール、細かい部品類の浸け置き洗い
全ての部屋や廊下などの床の磨き洗い、全ての床のワックス
部屋の角や、クローゼット内の角、引出しの角、キッチンなどの棚内部の角なども
道具を使ってしっかりごみや汚れを取ります。

これら全ての作業を1人で1日で行うのです。
身体を止めることなく、常に動き続けていないと終わりません。
それもかなり効率よく動かないといけません。でないと体力が持ちませんし仕事が終わりません。

私が友人と独立して2人でも1日で終わらせることができなかったのが良い例です。
当時はまだ20歳代前半で、体力には相当自信がありました。
それでも終わらないほどに仕事量があるのです。

ですが中々この大変さが分かってもらえないのです。
私もそうでしたが、掃除くらい大したことないでしょと思われがちな職種であると感じています。
本当は厳しい仕事なのに分かってもらいにくい職業ランキングがあるとしたら
かなり良い順位に入ると思います笑

厳しいわりに賃金はというと…。
残念ながら減っていっております。
その為、年々ハウスクリーニング職人は減ってきているように感じます。

近年では本当に、職人協会を作って、職人の為の最低賃金制度みたいなものを作って
ハウスクリーニングやクロス張替えのように単価がどんどん減ってしっまて価格崩壊しているような
業種を守っていく必要があるように思います。

だいぶハウスクリーニング屋さんが大変なんだという話に偏ってしまいましたが
その大変さを理解してもらうだけでも、職人の立場からしたらありがたいものです。
それだけでも理解してくれる大家さんや管理会社さんの為に頑張ろうという気持ちになりますが
ハウスクリーニングと合わせて他の仕事を頼んでみると良いです。

ハウスクリーニング屋さんは実は器用で、クリーニング以外にも色々できる職人さんは多くいます。
一番最後に現場に入り、全ての場所をクリーニングするわけですから、お部屋の破損個所や
紛失部品、傷んでしまっている場所などなど、様々な部分のお部屋の変化に気付くことができます。

そしてそれを直したり足りない部品を補充したり、塗装を施したり、水道の手入れをしたり
実は幅広く仕事をお願いすることができるのです。
ハウスクリーニングだけでは少し稼ぎが寂しいけれど、他のちょっとした工事をついでに行うことで
しっかり稼げているハウスクリーニング職人さんも少なくないはずです。
また大家さんや管理会社さん側からすれば、ついでに仕事を頼んだ方が安くすみます。
お互いに良い状況を作ることができるわけです。

網戸の張替や、色あせてしまっている所の塗装、パッキン交換に電気取替
中には設備をいじれたり、ダイノックを張り替えることができる職人さんもいます。

単価が下がったとしても皆生き残るために、考え、工夫しています。
そのあたりを理解して頂いて、何か他の仕事を頼んでみてはいかがでしょうか?

ひょっとしたら良い結果につながるかもしれません。
是非上手にハウスクリーニング屋さんとお付き合いください。